レアゾン・ホールディングス 2024新卒エンジニアLLM研修 - 目的設定の重要性と、対話型AIの力を有効に引き出す方法 -

こんにちは、ゲーム事業部でサーバーエンジニアをやっている西窪です!

本記事では、2024年度エンジニア新卒研修の中でも、かなり異彩を放っていた、LLM研修について、まとめて紹介していきたいと思います。

と、本編に入る前に注意点を1点だけお伝えしておきます。

このLLM研修の記事では、LLMの仕組みや構造について学ぶことはできません!

それでもご興味のある方は、覗いてみてください。

研修の概要

研修の概要はオウンドメディアの記事で詳しく紹介していますので、こちらからご覧ください。media.reazon.jp

LLM研修の概要

Q.そもそもLLMとは?

A.LLMは「大規模言語モデル(Large Language Model)」の略です。これは、大量のテキストデータを用いてトレーニングされた人工知能モデルで、人間のような言語生成や理解ができるように設計されています。

と、LLMを基盤にしたChatGPT君が言っていました。
言ってくれた通り、要は、大量の文書データで学習させたAIですね。

そんな、一見仕組みが難しそうなLLM。 今年の新卒研修では、LLM講義の開催期間はたった一日でした。

一体どんな濃い内容なんだ!? と誰もが感じていると思います。

それでは、早速、LLM講義のスケジュールについて見てみましょう! スケジュールはこちらです。

1. 脱出ゲーム

2. ビジネスゲーム

!?

LLMの知識はどこへやら。謎のゲーム大会が始まってしまいました。

困惑している人もいるかもしれませんが、 当時、アジェンダを見た僕も、一体何が始まるんだ、と驚きを隠せない状態でした。

しかし、もちろんこの講義スケジュールにはきちんとした理由があります。 それについて話す前に、まずは講義の流れを紹介していきます。

ゲームについて

まず、今回行われたゲームは、いずれにも共通している点があります。それがこちら。

  • それぞれ「目的」「状況」が提示されており、その目的を達成するための「手段」が用意されている

  • 最終的に、その「手段」を、「目的」を達成する際の重要度でランクづけする、もしくは、どの「手段」が最も「目的」達成のために最適かを決定する

  • 議論の際、ChatGPT もしくは ReazonLLM*1(つまり、LLMの力)を使っても良い!

この3点となっています。 また、このゲームは、チームで行うもので、 3人 or 4人 1組のチームで話し合い、結論を出す形式でした。

脱出ゲーム

こちらは、月での生存を題材にしたゲームです。

出典:https://www.nasa.gov/wp-content/uploads/2009/07/166504main_Survival.pdf

まとめると、

まず、議論の最終目標を決め、
(アウトポストに行く or 飛行船で待つ)
その後、ChatGPTを用いて議論し、生存に重要なアイテムランキングとして、 15個のアイテムをランキング付けする、といった流れです。

(1位:酸素ボンベ、2位:マッチ箱 … みたいな感じで)

答えは載せませんが、皆さんも一緒に考えてみましょう! (答えは出典のやつを検索すると出てくるはずです)

自分のチームは何をした?

まず、最終目標を「アウトポストに向かうか」「飛行船で待つか」のどちらに設定するかですが、 これに関しては、4人全員が一致して「アウトポストに向かう」を選択したので、割とスムーズに決まりました。

そして、その後のランキング付けですが、これは揉めに揉めました。

「地球よりも重力弱いから、このアイテム絶対必要じゃね?」
宇宙線、このアイテム使えば防げそうな気がするんだけどなー」
「いや、このアイテム、よくよく考えたら優先度低くね?」

など、様々な意見が飛び交い、最後の最後まで中々まとまりませんでした。

そんな中、自分のチームは、ChatGPTに質問する際、目的(アウトポストへ行くこと)とかは入れずに、とにかくデータの調査を素早くまとめてくれるようにお願いしました。

例えば、「酸素ボンベの持続時間について教えてください」
「月面では〇〇km歩くのに、どれくらいかかると思いますか?」
といった、調べてまとめるのが少しめんどくさいことをまとめてもらい、議論の指標にしました。

そして、タイムアップとなり、正解発表の時間に。

さあ、僕らの作った重要アイテムランキング、どうなんだい!?
(最終的に僕らが導き出したランキングは、ネタバレになる可能性があるので省略します)

結果は?

全然違いました。

絶対に必要だろうと思っていたアイテムが、実は月だとそんなに役立たなかったり、

ノーマークでランキング下位に入れていたアイテムが、 実は超有用でランキング上位だったりと、驚きまくりでした。

意外とこのゲーム難しいんだなぁ、としみじみ感じました。

ゲーム終了後

ゲームと答え合わせが終了し、少し落ち着いたところで、 運営の方から、この講義の目的に直接関わる、とあるアドバイスをいただきました。

それは、

「目的を常に意識し、それを達成することを第一に置く事が大事!」

「質問の目的が無いと、ChatGPTは意図を汲み取ることが出来ず、的確な答えを出してくれない可能性がある。ChatGPTには、「目的」を教えることを意識すべき!」

というものでした。

先ほどの議論でも、手段が目的化していたり、ChatGPTに目的を教えず質問していたりしたので、次のゲームできちんと正解を導き出せるよう、アドバイスを守って議論をすることを心がけて臨むことにしました。

ビジネスゲーム

こちらは、製品を売り出すことを題材にしたゲームです。
そして、このゲームには明確な正解はなく、 最も目的達成に有効な手段は何なのかを導き出す、といった方針のゲームでした。

自分のチームは何をした?

今回は、先ほどのゲーム終了後の話をふまえ、 目的、状況、手段をしっかりとメモに記載し、意識するようにしました。

また、ChatGPTには、目的、状況をきちんと伝え、
「目的を達成するには、どのような仕様が不可欠か?」
といったプロンプトや、
「2ヶ月で自社製品のECサイトを作成することは可能か?
人員はどのくらい必要か?それぞれどのような役割分担で可能か?」といったプロンプトを入力し、議論に協力してもらいました。

その結果、20人のメンバーで、2ヶ月あれば、かなりの急ピッチになるが、不可能ではないという結論をChatGPTは導き出してくれました。

最終的に、「自社の20人で2ヶ月で作り、制作費用を2000万円に抑える」 というChatGPTの案を採用し、そうすれば費用対効果を最大限に大きく出来ると考えました。

(今思うと結構、滅茶苦茶な要求してる気がする...)

このゲームの狙い

かなり合理的な判断が出来たのではないか、と思い、満足した状態でタイムアップ! そして運営側からアナウンス!

発表された「運営側の考える最も合理的な判断」は、

「そもそもの目的は、市場独占の前に販売を広げることであり、 ECサイトを作る必要性は薄い可能性が高い!
Amazonとかに売りに出し、広告にお金を回す方が合理的である!」

とのこと。

「え???与えられた選択肢にないじゃん!!そんなのアリかよ!!」と最初は思いましたが、 確かに、そもそもプログラムを組む必要があるのか、そもそもこの手段自体が間違っていないか、 などをエンジニアとして吟味することは大事だよなぁ、と思い、このゲーム大会は幕を閉じました。

この講義の目的

さて、色々話してきましたが、結局この講義では何が伝えたいのか。 ここで、改めてまとめます。

この講義の目的は、

LLMそのものについてではなく、LLMへの正しい質問の仕方と、質問の際の意識を学ぶ

ということです。

ここからちょっと真面目な話になります。

まず、ChatGPTに関わらず、誰かに質問するときは、 「目的」(「状況」「手段」)を意識し、提示することが定石です。

例えば、「おすすめの武器を教えてください」という質問よりも、「この敵を倒したいので、おすすめの武器を教えてください」といった質問の方が、 相手も回答を比較的出しやすくなるし、質問そのものに対する疑念も解消されます。

これは、ChatGPTに質問する際も同じであり、プロンプトに「目的」を入れておくと、ChatGPT が目的達成の補助をしてくれるように答えを出力してくれることが多いです。

しかし、質問する際、質問内容を伝えることに気を取られすぎて、大事な「目的」を伝え忘れてしまう、もしくは、手段の目的化などにより、元々の「目的」を見失ってしまうことが多々あります。

そのため本講義では、「目的を意識する力を養い」、「LLM の力を有効活用する」ため、 脱出ゲームとビジネスゲームの2本を通して、 「目的」を意識し、その達成を第一とし、現在とのギャップをどのようにして埋めるかを考えさせると同時に、ChatGPT の力を引き出す練習を行った。

…と、まとめるとこんな感じです。

現状、私はまだ業務であまりLLMの力を借りてはいませんが、この研修で学んだ 「目的意識」は、質問の際に役立っていると実感しています。

最後に

というわけで、今回は、LLM研修についてまとめました。
これから、AIが当たり前となるであろう時代において、正しい対話型AIの活用法はかなり大事になると思います。
そのために、みなさんも

  • 目的を常に意識すること

  • 「目的」(「状況」「手段」)を意識したプロンプト作成

を心がけてみてはいかがでしょうか。

あなたもそう思いますよね? ChatGPTさん?

ChatGPT君も分かっててくれて、何よりだ!

▼採用情報 recruit.reazon.jp

*1:アゾン・ホールディングス社内にて使える対話型AI。ChatGPT を社内向けに導入したもので、社外秘になる内容を含んだ入力が、ChatGPT の学習に使われないようになっている